A Life With Adult ADHD

2014年にADHD持ちであることを確信し、2017年に自身のサイコパス属性に気が付いた一人会社IT社長のブログ

快適に人生をやり過ごすために。【皆さまのADHDブログ

「風立ちぬ」見た

ネタバレなし。

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中学生の時に映画館で「天空の城ラピュタ」を見て以来、宮崎駿信者である。一通り劇場で見た記憶があるが、どれも好きだ。宮崎駿の作品を映画館で見る度に「感動した。傑作だ」と思うのだが「風立ちぬ」も例外ではなかった。

しかし、今回は何かが違う。まず、明らかに「子供向け」ではない。

と書いてみて、自分で違和感を覚えた。個人的には、そもそも宮崎作品はいわゆる「大人も楽しめる『子供向け作品』」ではないと思っている。天才がどっぷり没入して作り上げた高度な映像世界だ。「子供向け作品」などという範疇は軽く超えている。ストーリーのテンポがよく、キャラが魅力的だから、子供でも楽しめる。「子供向け」なのではない。「子供が見ても面白い作品」なのだ。大人がじっくり鑑賞したって、完全に理解したとは思えない何かが残る。大人同士で議論がかみ合わない。深層心理をえぐるようなカオスが宮崎駿作品には必ずついて回る。

話を元に戻そう。この映画を見て、わたしは「子供が見ても分からないだろう」と直感したのだ。今までになかった感想だ。恐らく、高校生以上なら(表面的に)理解して、楽しめるとは思う。しかし、この映画を見て「あー。何となく分かるな」と共感できるのは、少なくとも30歳以上で、チームワークを経験したことのある社会人ではないか。こんな風に仲間と仕事をしたかった。こんな人生も、悪くないだろうな。会社であくせく働きながら、ふと自分の人生を振り返って、しみじみ別の可能性を考えてみる。そんな経験がなければ「風立ちぬ」の幻想世界は理解できないのではないか。

トトロの時がそうだった。若い頃見て、それなりに感動した。面白かったね。と思った。しかし、本当に理解できたのは子供が生まれてからだ。子供と一緒にテレビで見たとき、嗚咽が漏れ、涙が止まらなかった。若い頃の自分は当時見た「となりのトトロ」を全然理解できてなかった。と思った。

スタッフロールを見ながら涙が止まるのを待ち、映画館を出て、最初に言葉になったのはこんな感想だ。

「宮崎さん、ジブリらしさとか、子供のことは気にせず、本当に自分の作りたいように作ったんだな」。

超映画批評前田有一氏が「風立ちぬ」を酷評したのも、その辺りのミスマッチに原因があるように思う。

「風立ちぬ」40点

酷評といっても40点だから、何かしら引っかかるところがあったのだろう。

ノンフィクションは、XXあるべきなのに、なってない。故にダメだ。
宮崎作品には、爽快な戦闘シーンがが不可欠だ。しかるに、それがない。故にダメだ。
宮崎作品は、人物の描写がステレオタイプであり、改善されるべきだ。しかるに、改善されていない。故にダメだ
とにかく、声優がダメダメだ。

「矛盾」という言葉を軸に論じている辺りは、自分のしっぽにじゃれ付いている子犬を思わせる。

また、宮崎駿作品での人物像がステレオタイプなのは、中学生女子でも気づくことであり(「こんな女いねーよ」)「カリオストロの城」から言われていることである。今更ドヤ顔で言うなよ。ってか、そんなこと言ってる前田さんだってクラリスが好きなんじゃないの?などと邪推してしまう評論すら、あるじゃないか。

この映画は、ノンフィクションではないのだ。

宮崎駿が自分の人生を零戦設計者に重ね、そこに薄幸の美少女を配した大人のファンタジーなのだ。

会社で一生懸命働いている。苦労は一杯してきたが、何とかやってきた。不満はあるが、頑張っている。仕事で楽しいこともあった。恋愛も、ドラマティックではないにせよ、少しは経験した。それなりに満足しなければいけないのだろうが、人生の収支はまだマイナスな気がする。というオジサンのドリーム。それが「風立ちぬ」なのだ。

そんな(宮崎駿信者である)オジサンであるわたしが、前田有一氏に反論するとすれば。

この映画は、十分に爽快である。飛行シーンの爽快さは、ラピュタにも劣らないと思う。

戦闘シーン?この映画には不要だ。

声優?わたしはアリだと思った。あまりに感情表現が豊かな声優には、わたしは感情移入できない。リアルな方がいい。(この辺は好みもあるだろうな)

人物がステレオタイプ?
「二郎も本庄もカッコよく書かれすぎだろ!惚れてまうやろ!」
「こんな凛々しい・かわいい・カッコいい女いねーだろ」
「こんな懐の深いツンデレ上司、いねーよ。惚れ(ry」

はい。認めます。しかしね。繰り返すけれど、これはオジサンのファンタジーなのだよ。酸いも甘いもかみ分けて、一生懸命生きてきて、ふと立ち止まって思う別の人生。こんな仕事ができたら。こんな同僚と一緒に仕事ができたら。こんな上司、女性に出会えたら・・・

かつて子供だった大人への、宮崎駿からのプレゼントが「となりのトトロ」だったとすれば、自分の人生を振り返るオジサンへのプレゼントが「風立ちぬ」ではないか。

とすれば、「風立ちぬ」とは「大人のトトロ」なのではないだろうか。そんなことを思う。

思っていたよりも、良かった。傑作だった。

映画の余韻に浸りながら、そう確信するのだ。